2009年05月03日

「年越し派遣村」後の生活保護、入りやすく出やすい合理的な制度設計を

●生活保護について、いろいろな議論が出ています。
  評論家により、生活保護の今の制度は活用すべきだとの意見もあれば、「年金」より生活水準が高い位置にあるといって「生活保護」の
制度の設計にいまひとつ問題があるとの見方をする評論家もいます。今回の年越し派遣村(特定非営利活動法人自立生活サポートセンターもやい他労働組合等)によって
多くの「生活保護」の申請が受理されその恩恵にあずかっています。結局はこの状態を生み出している社会に問題がありますが、
 その部分を今後どう網羅していくかが今後の政治の焦点になりそうです。一歩間違えれば、今健全に正社員として働いている人にも、路上生活や不測の事態が起こるといわれている
昨今でこのような活動の重要さは今後も大切にしていくべきでしょう。


(以下参照)
「年越し派遣村」後の生活保護、入りやすく出やすい合理的な制度設計を- 09/04/30 | 17:25
 

 生活保護の被保護人員が急増している。生活保護は憲法第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という生存権に基づき、生活保護法(1950年施行)により、生活費、住居費、教育費、医療費、出産費、葬祭費などが支給される。
 生活保護は世帯ごとに支給される。被保護世帯と人員数の推移を見ると、92年度58万5972世帯、89万8499人を底に増え続けており、2009年1月116万8354世帯、161万8543人とほぼ倍増している。正月休みを挟んだ期間に、「年越し派遣村」がファクスで申請した生活保護申請が受理され、若者を含む全員に速やかに支給されたことから、生活保護は受けやすいのではないかという認識が広まり、申請者が急増している。
 政府(厚生労働省)は生活保護を「最後のセーフティネット」と位置づけている。生活保護の前段階のセーフティネットである雇用保険や離職した人に対する融資制度などの拡充により、なるべく生活保護支給にまで至らない政策を採用している。
 ただ生活保護では、生活費、住居費の支給だけでなく、社会保険料が事実上免除される(国民年金、国民健康保険、介護保険)うえ、医療費の自己負担がない医療扶助があるために、社会保険料や医療費負担に耐えかねた年金暮らしの高齢者が生活保護に移行する可能性も高い。
 また、生活保護を受ける条件のあるはずの母子家庭の多くが生活保護を受けていない。生活保護への認識が高まるにつれて、母子家庭も申請する動きを見せると推測される。
 こうしたことを見渡すと、生活保護の被保護人員はいずれ200万人を超える可能性が高いだろう。生活保護の現状と制度設計について考える機会が多くなるはずだ。
現場の運用と法律との落差

 08年12月31日から09年1月5日まで、東京都千代田区の日比谷公園では「年越し派遣村」が開設された。不況で職と住まいを失う非正規労働者が増える情勢の中で、複数のNPO法人や労働組合などが組織したものだ。1月1日から10日にかけて、「年越し派遣村」からは232人が千代田区に生活保護申請を行った。全員がファクスによる申請であり、最短3日という短期間で全員に生活保護が受理されたことで、社会的な注目を集めた。
派遣村からの申請者のうち、その後申請を取り下げた2人を除く230人の年齢階層は、60歳代以上38人、50歳代62人、40歳代68人、30歳代52人、20歳代10人という構成で、最年長は74歳、最年少が26歳だった。

 当時の千代田区の生活保護受給者数は490人程度、担当するケースワーカーはわずか5人である。そこに230人もの新たな受給者が出現した。現在では「年越し派遣村」からの受給者は7人を除いて、すでに他の自治体に転居しているという。
 生活保護の窓口事務を担当するのは自治体の福祉事務所である。生活保護費の負担は国が75%、自治体が25%(これを都道府県と市町村が折半)となっている。 
 厚生労働省は、「過去に被保護人員にキャップ(上限)をはめる政策はとったことがない」というが、財政難とケースワーカーの不足に悩む多くの自治体は、これまで生活保護を申請させない「水際作戦」を行ってきた。東京都特別区のあるOBによると、「相談に来ても申請用紙を渡さない。プライドをずたずたにして追い返すのが腕のよい生活保護担当者とされてきた」という。さらに「硫黄島作戦」も行われたという。上陸(支給)を許しても3カ月程度で「もう自立できるでしょう」と支給廃止に持ち込む撃退作戦だ。こうした対応により、「働く意思、能力、機会がある」と見なされる50歳以下の申請・受給は、病気や障害のある人々を除くと困難だった。
 「ファクスでの生活保護申請は法律上できることになっている。申請地に住所がないことも申請を阻害することにならない。生活困窮者に速やかに支給することも法律にかなっている」と厚生労働省の担当者は語る。
 「年越し派遣村」に参画したNPO法人もやいの稲葉剛理事長は、「本来、生活保護法では一定の条件を満たせば、生活保護が支給される。そのことを世の中に広報した効果があった」という。ただ、「一人で申請に行くのと、NPOや弁護士がついていくのとでは、担当者の態度がまったく違う」とも指摘する。
年金より高い生活保護基準
 生活保護の支給基準は「最低生活の保障」と定義されているが、その基準以下で働くワーキングプアと呼ばれる人々は、日本に800万人とも1000万人ともいわれる。
 東京都多摩地区に住む単身者のAさん(57)は、月に生活扶助で8万1610円、家賃(ワンルームマンション)4万5000円の合計12万6610円の扶助を受けている。11月から3月は暖房代3090円が加算される。東京都では上下水道料金が減額され、NHK受信料も申請すれば免除される。
 生活保護受給者は国民健康保険から外されているが、医療扶助により医療費は全額無料である。介護保険には加入しているが、保険料は国・自治体が負担する。こうした医療扶助が生活保護世帯の大きな助けになっている。国と自治体合計2兆6779億円(08年度)の生活保護費のちょうど半分が医療扶助である。
 厚生労働省の資料によると、東京都など1級地―1での高齢者夫婦世帯の生活扶助基準は12万1940円。この基準はほとんどの同年齢の国民年金受給者の収入より高いだろう。さらに住居費、医療費などの扶助が加わる。このことから、「年金より生活保護の基準が高いということは、制度設計自体がおかしいことを意味する」(原田泰・大和総研チーフエコノミスト)という指摘もある。
 一方で、東京都特別区でケースワーカーとして働いた経験がある企業経営者は、「生活保護は憲法の理念に由来する社会福祉制度の根幹である。現在、日本には障害者福祉など多くの社会福祉があるが、いずれも関係団体の運動の結果、政治と行政が動いて実現したもの」としたうえで、「生活保護を最後のセーフティネットと位置づけ、なるべく使わせない政策よりも、生活保護を活用する政策のほうが、現存する多くの社会福祉を整理、統合することが可能になる。逆説的だが、行財政改革にもつながる」と指摘する。
 現在の生活保護は「入りにくく、出にくい」といわれる。これを多くの人が人生の困難な時期に使える「入りやすく、出やすい」制度にすれば国民の安心感も高まる。生活保護にかかわる非合理性やモラルハザードを排除したうえで、もっと使いやすい制度にする知恵を出すべきだ。

(内田通夫 =週刊東洋経済)
http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/e7af0fe01d0f796f45f3ee108b447500/page/1/
(2009/4/30/東洋経済ビジネスオンライン)

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