● 昨日の話になりますが、「布川事件」の再審の第一審で無罪の判決が言い渡されました。
当然「疑わしきは被告人の利益に」という大原則にもとづいたものではありますが、なんとも検察の捜査がいい加減なことが、この事件に限らず最近著しくあらわになっています。
こうなると今「死刑」制度の存続が議論されていますが、あやまって「死刑」になって実は「無罪」でしたという事もあるのではないかと疑念を抱く人もおおいのではないかと思います。
実は「死刑」と「無期懲役」の判決の根拠でもその点が判断の分かれ目になっているのではないかと必然的に考えられます。というのは、判決で有罪が言い渡される時は、その事件の事実は「蓋然性(がいぜんせい)」という誰もが疑いをさしはさまないということにより、犯罪の証明が立証できたということです。しかしほんの少しでも疑う余地がある場合は、無罪となるのですが、その法則にしたがわない場合は本来その残虐さで「死刑」のところ、ほんの少しだけ疑わしい処がある場合は「無期懲役」で済ますという原理がはたらいているのではないかと思えるのです。44年という月日をこういった事件で費やされるのですからたまったものではありません。不動産投資もできないだけでなく、就職や再就職もままなりません。失うのはこれだけではありません。
とても怖い話です。
そういった恐れがあるにも関わらず、検察が証拠を隠す(証拠を選ぶ)というのは犯罪に等しいということです。
今震災で東北地方太平洋沿岸の被災者をいち早く救っていかなくてはならないのに、国会では、相変わらず内閣不信任決議案を出す自民党の谷垣貞一氏とか、「みんなの党は、アジェンダの党だ」とわけのわからないことばかり言っている渡辺美喜(わたなべ よしみ) 氏のような国会議員がいる以上、検察の立て直しは勿論、日本の復興は望めないと思います。
強盗殺人罪に問われながら長年、冤罪(えんざい)を主張してきた2人の男性の再審公判で、水戸地裁土浦支部が無罪を言い渡した。67年に茨城県利根町布川で大工の男性が殺害された「布川事件」である。
判決は「犯人性を推認させる証拠は何ら存在しない」と指摘した。明白な無罪の判断であり、警察・検察は重く受け止めるべきだ。
被告の桜井昌司さんと杉山卓男さんは捜査段階でいったん自白したが、公判では自白は強要だとして無罪を主張した。物証はなかったが、1、2審、最高裁とも自白の信用性を認め78年に無期懲役刑が確定し、刑務所へ。2人は96年に仮釈放されるまで29年間を塀の中で過ごした。
仮釈放後の01年に始まった第2次再審請求審で、検察側がそれまで表に出さなかった証拠を開示した。
中には、犯行時間帯に現場付近にいた2人組が桜井さんと杉山さんとは異なると証言する近隣女性の調書や、現場に残っていた毛髪が2人のものではないとする茨城県警作成の鑑定書があった。また、取り調べの録音テープを専門家が鑑定すると、10カ所以上も編集痕跡があった。
「殺害方法が自白とは異なる」との新たな鑑定書も採用され、09年12月、最高裁で再審開始が確定した。
事件が起きたのは44年も前だが、現在の司法の現状にも通じる多くの教訓がくみ取れる。
都合が悪いからと、被告に有利な証拠を出さなくていいのか。公益の代表者である検察が、必ずしも「法と証拠」に基づいていないことが明らかになった。大阪地検特捜部の郵便不正事件にも共通する構図だ。
検察改革の一環で、「検察官倫理規定」が策定される。だが、倫理任せで足りるのか。少なくとも、殺人のような重大事件や再審では、証拠の全面開示か全証拠リストの開示を義務づけるべきだろう。
もし裁判員裁判で、被告に有利な証拠が隠されたことが後に判明すれば、司法に対する国民の信頼は大きく損なわれるに違いない。
また、捜査当局による取り調べテープの編集は、可視化(録音・録画)の議論に直結する。可視化によって取り調べの任意性は一定程度保たれるが、捜査側が自白部分を都合よく切り取っては、真相解明に有害だ。判決も「全過程で録音されたものではなく、捜査官とのやりとりが何ら明らかになっていない」と、価値に疑問を投げかけた。取り調べ過程の全面可視化がやはり求められる。
死刑か無期懲役が確定した事件の再審は戦後7件目で、過去6件は無罪が確定した。一連の経緯をみれば、検察は控訴をせず、2人の無罪を確定させるべきである。
布川事件:再審無罪 無期確定から33年…検察主張退ける
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布川事件:希望胸に審判の朝 桜井さん、杉山さん法廷へ
布川事件:24日、再審判決 誤審原因どう言及
毎日新聞 2011年5月25日 2時30分
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20110525k0000m070123000c.html
「当然だが評価できる」=布川事件無罪で日弁連
布川事件の再審無罪判決を受け、日弁連の宇都宮健児会長は記者会見し、「当然のことだが、ようやく正義を実現したことは評価できる。警察、検察、裁判所の責任は重く、深刻に反省すべきだ」とする声明を発表した。
宇都宮会長は「隠していた有利な証拠を早く出せば、もっと早く冤罪(えんざい)と分かった。証拠の改ざんに匹敵する問題で、隠蔽(いんぺい)した検察官が問題にされないのはおかしい」と批判。「取り調べの可視化と証拠の全面開示、人質司法の改革が必要だ」と述べた。(2011/05/24-20:11)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011052400866