安愚楽牧場の民事再生における目的と今後たどる経緯(破産)とは?
●安愚楽牧場(安愚楽牧場被害)のニュースも8月1日から連日のように続き、ほぼ1箇月強は続きました。今年に入っての大型倒産(負債総額が約4330億円)となり(昨年倒産の武富士とほぼ同額)、現時点の2位がSFコーポレーション(旧 三和ファイナンス〜消費者金融受の大手))で3位が林原(岡山県の研究開発型の超同族企業)です。2位と3位の負債額はザックリと両者とも1800億円程度となっていたかと思います。
よく「倒産」(とうさん)とう言葉が多く多用されますが、必ずしも会社が失くなる意味ではなく、「会社が期日迄にもしくは期日をもう少し延ばしても債務等を弁済出来ない状態になってしまった。」といような状態の事を指しているのですが、「倒産」とう言葉が会社が失くなるという意味合いが強くなってしまっているため、報道などでは「経営破綻」(けいえいはたん)とう言葉で置き換えていることが多くなっています。
そういう意味も踏まえると、民事再生法は法的手続き(裁判所が関与する)のある倒産処理で、再生を目指すということになるので、「倒産」という言葉を用いられても実際は会社が失くなる訳ではなく「このままだと、会社の存続が危うくなるので、『借金(債務)を軽減してくれ!』と頼むこと」これが民事再生法の目的です。
したがって、安愚楽牧場に照らし合わせて見ると、基本的に民事再生は「債務をカットもしくは軽減してくれ」とうことなのですから、まず「債務を軽減すること」から始めます。通常民事再生法の域に入るのは、大体現在抱えている債務を半分(半分はチャラにしてください)にすれば、立ち直れるというものが普通なので、現時点で「1割なら最大弁済します」とか現時点で1%の配分予想しか算出できないような資産内容であれば、現実問題として、「再生」は非常に厳しい状況です。
そうなると、今後安愚楽牧場が来年(2012年2月14日)の再生計画案の提出する内容となると、本当に再生を試みるのであれば、4330億円の全負債のうち97%の約4200億円が安愚楽牧場の和牛オーナーの債権額(一般債権と同じですが)となるものを全額カットして、さらに広告費などの一般債権も全額カットして、やっと再生へと向かえるくらいのものなので、再生計画案の内容は「オーナー全額カットで、一般債権全額カット〜オーナーも広告未払いも泣いてください!」とするのが本当の再生への意気込みとなります。
当然そんな民事再生案には債権者は応じる訳はありませんから、もしその内容が提案されたときは否決が多数となり、修正もしない限りは「破産」ともなります。だから、実現しそうになくても(実現するかどうかわからない東電からの補償の目論見もあるので)、「1割もしくは2割」配当の計画案は出されるのかもしれません。そこで債権者(特に現実の情報を知り得ない人)においては、賛成票を投じるかもしれません。
それでも否決案が多くなった場合は、破産となりますが賛成が債権者数及び総債権額を上回った場合は、再生へと向かいます。しかし、現実味の無い再生計画案であれば、どこかで頓挫する可能性が高いので、再生中に計画案の履行をされていないとうことで中止になり、破産へと向かう事も充分に考えられます。
つまり、今述べたことを勘案すると、「民事再生法」で最後まで行う(言い方をかえれば民事再生で逃げ切る)というのは、安愚楽牧場にとってかなり厳しい現実であるとかんがえられます。
今にあらためて強調することではありませんが、安愚楽牧場経営者・代理人弁護士が最初から「清算」をこの時点で言っているのですから、民事再生を最後まで行くのは厳しいと言っているようなものだと思います。
それ以降の事(破産開始決定後)はまた日を改めてお伝えしたいと思います。