民事再生から破産へ移行した時の傾向と安愚楽牧場被害対策
前回は、安愚楽牧場が民事再生してからのスケジュールや経緯をお伝えしましたが、
民事再生手続きが頓挫(とんざ)した時に「破産」へと移行した時の状況をおつたえします。
必ずしも「破産」になるとは限りませんが、今までの状況や過去の類似した事件とを照らし合わせると「破産」に移行する可能性が充分にございますので、「破産」になった時の安愚楽牧場の状態などのイメージをしておくことが十分に必要になります。
特に預託農場や和牛オーナー債権者も安愚楽牧場の今後がイメージや予想を立てるということが、今後の被害対策や自分自身の生活の再建の手助けとなるので、「安愚楽牧場の今後」についてイメージをしていただけたらと思います。
なぜ、以前から「破産」を強調しているのかといいますと、安愚楽牧場の倒産宣言(つまり2011年8月1日)をした時の負債が4330億円でしかもその負債の97%強の約4200億円が7万人いるオーナー債権であるということを考えれば、やはり東日本大震災の影響ということには当然考えられず、それ以前の2010年の「口蹄疫」による損失拡大と考えても少し無理があるような負債の比率なので、やはり経営に無理があったのかということになります。当然自転車操業(チャリンカー)も倒産宣言直前において、「被災地応援コース」と題して、今までとはかんがえられないような年8%もの利息を付けるような配当を「約束」するなど、やはり損失や配当を新たな出資金で賄おうと考えても当然ではないかと思われるような運営となっているため、やはり「破産」で倒産処理を行わなければ、本当の安愚楽牧場の被害回復は望めないそのような結果となっているということです。
今後、民事再生を進めていく上でまず、破産となる可能性の第一歩が来年2月14日に提出される「再生計画案」に対する採決(賛成か反対かをきめること)になります。
その日付はあくまでも2月14日になので、実際に投票する日はそれよりあとになります。先日もおつたえしたようにこの再生計画案の提出は延長することができます。そうなると5月14日という事になり、実際の投票は夏になってしまうとう事も大方予想されます。
それ以前にも、何らかの犯罪の発覚などがあれば、破産となったりすることがあったり、また民事再生でも管財人が立つような事もあるのかと思いますが、それらはあまり発覚する確率が低かったり、管財人を立てるにはよほど裁判所が納得する理由や証拠もないかぎり安易に認めることがないので、やはり「民事再生法」における再生計画案の採決が最初の「破産」への登竜門になるのかと思います。
仮に採決で賛成票が上回り、再生計画案が実行されるとしたら、恐ら「く再生計画案の提示内容」が債権者にとってやや有利となるような内容であると考えられますので、それが実行されるとしても、まだ計画不履行などが生じて、その後において破産になることも充分に考えられます。したがって、民事再生法を最後まで突き通すことは考えにくいところに来ています。
では、再生計画案が延長され2012年5月14日に計画案がでると、2012年7月や8月の投票と考えられます。そして、否決多数で否決されると、現在の経営陣は、退陣して、破産管財人が立ちます。破産管財人は現在の監督委員(弁護士)が横滑りで就任することが慣例になっていますので今回も恐らくそのようになるのかと思います。
すると、破産管財人は安愚楽牧場の真の財務内容を精査作成していくことになるので、民事再生では見えなかったことが見えてくるようになります。そしてその発表である第1回の安愚楽牧場の債権者集会(破産)で明らかにされます。しかしその期日は大型の倒産処理でもあるため、「破産債権届け」なども発生するため、破産となってから約1年近くの期日が必要になるのかとおもいますので、来年の2012年中には「破産者株式会社安愚楽牧場第1回債権者集会」の実現は難しい模様です。するとその期日はいつになるかといいますと2013年6月位が大方予想されます。
第1回の破産での債権者集会では、破産管財人から安愚楽牧場の破綻の経緯やその財務状況と現時点(債権者集会当日での)残余財産の状況そして、不正らしきものがあった場合はその報告もあわせてなされます。
それが何を示すかといいますと、刑事事件の発端となる「証拠」が明るみになります。不正等がなければそのようなことはありませんが、そのような事実があれば、その材料をもとに被害者と言える人が刑事告訴なり、またオーナーの代理人である被害者弁護団が「やる気があれば」告発もしくは依頼者の代理で告訴という運びになります。
それ以前でも、「不正」や「詐欺容疑」が明らかになれば、当然警察での強制捜査の対象になりますが、民事再生においては、従業員が内部告発をしたりしない限り発覚することは難しく、刑事事件として進展するオーソドックスな機会が破産後の「債権者集会」となるということになります。
また破産における破産管財人の任務は、いち早く財産をお金に替えて、債権者に分配し、会社の責任を免責させることが目的ですので、不正があったからと言って、刑事告訴するということは積極的には行いません。
また、その時点になって(現在から第1回の破産時の債権者集会迄2年近くの歳月を要すると残余財産が牛の餌でなくなってしまう可能性もあります)残余財産が今より大きく減っている可能性があるので、ややもすると、最も優先的に支払われるべき「破産管財人の報酬」(約1億円)も満足に支払われないこととなると、債権者への配当は勿論、どこかで廃止(異時廃止)ということにもなりかねません。
だから民事再生を続けるという意見もあるのかもしれませんが、現時点で配当率が1%ではないかといわれている現在を考えれば、民事再生も破産も同じ結果となり、民事再生では真の理由があきらかにならず、破産ではかなりの事が明らかになるという違いがでてくることの違いだけです。もちろん、破産では明らかになるわけですから、その責任対象も明確になり、管財人から旧経営人に賠償請求を起こすことも充分有りうることになります。(これは刑事事件は消極的だけど、破産会社の権利を主張することは積極的に行います。)
そうなると「わかる債権者」(情報を収集している債権者)としては「破産」の方がスッキリするという選択をするということになります。 「破産」の続きは別の機会に。