このえびすの食中毒事件は7月の半ばには任意整理ということだったんだけど、食中毒被害者に賠償金を払いたいが金融機関の債権者や仕入先の債権者が、「債権放棄」に応じなかったため、任意整理での処理はできずに、裁判所が関与する「特別清算」へと手続きに入るとのことです。その記事は9月30日付のものです。
現実問題として、任意整理だと債権者の多数決で分配は自由にできますが、あくまでも債権者が任意整理の計画案に賛成してくれないといけません。それが成立しなかったら、破産にするのかというところですが、実際に「被害者」の債権(未確定の賠償金なので、債権になるであろうという言い方が正しいです)がどうなっているかわからないので、「破産」するにはまだ程遠い話です。そこで、それよりゆるい方法(「清算目的の」民事再生法と同じようなもの)の特別清算が選ばれるという訳です。
特別清算が破産などと違うのでは、
経営者が続投することが可能なこと(民事再生法と同じ)
金額が破産手続きと比較して安い。
清算人(経営陣が続投もしくは、顧問弁護士が就任)の計画案に賛成か反対かをする場面がある。 (民事再生法もあります)しかし、可決要件が、総債権者の過半数超及び総債権額の2/3を超えること(民事再生案の可決は総債権者数の過半数超は同じであるが、総債権額の過半数超というところが違う)。
などとなります。
ではそれが、否決に終わった場合はどうなるかというと「破産」手続きに移行します。
特別清算の理屈は今述べた通りですが、
問題なのはまっ先に救済したい「食中毒の被害者」がこの制度でも優先的に賠償をできない(つまり、金融機関や仕入先と同じ同類の一般債権)ということです。
破産になれば、管財人の裁量で被害者の債権が優先されるはからいも可能かもしれませんが、その後金融機関などが不満となりその査定(破産担当の裁判所の決定)に異議申し立ての裁判となりその結果いかんになるのかと思います。
食中毒被害者は、ビジネス(取引上)における損失と同じような扱いになるから、現在の倒産処理の法律では、想定外のものなのかもしれません。
結局、経営陣個人への賠償請求(民事訴訟)を起こすしかないのかと思います。経営陣が他から借金してでも被害者に弁済するかが焦点となるのかもしれません。
これも消費者庁は動くべきでしょう。
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