この度の、最大の消費者被害とも言える「安愚楽牧場」に対して、目立った訴訟が提起されたということです。
海江田万里(かいえだ ばんり)氏の過去を、ご存じの方も多いかと思いますが、国会議員になる前は「経済評論家」ということで、多くのメディアに露出していました。それが20年前ということです。そしてその「経済評論家」の実績を高く買われて、政治家(国会議員)としてのスタートを切ったということです。
今のこの時期のこの立場でのこういった状況なので、海江田氏は、多くのところからバッシングを食らっていますが、その20年前の「経済評論家」としての活動は、大変家庭の主婦や、投資の素人などから、「分かりやすい、実践的だ、具体的だ」などと高く評価されていました。類似した活動の人に「野末陳平」氏という税金に詳しいタレントもおり、野末氏の弟子は海江田氏のようなものでした。
例えば、20年前というと1993年(バブル経済がちょうどはじけるかなっていうところ)、25年前というと1988年(バブルの絶頂期)でした。
その時期は不動産の価格が高騰し、マンションではなく「オクション」なんていう言葉も流行り出す時代でした。金融商品というと、郵便局の「定額貯金」やちょっと足を延ばして、信託銀行のビッグ(変動利率の貯蓄商品)、ワイド(固定金利の金融債)が主なものでした。
その時代、「小金持ち」といえるような国民の時代でしたので、銀行やタンスに単に預けていくだけではなく、ちょっとささやかな「冒険」でもして、虎の子を増やそうという人も少なくありませんでした。
そこで大きく登場していた一人に海江田万里氏がいるのです。
海江田氏の特徴は、他の複雑抽象的な評論多い経済評論家のなかでも、生活に密着した、具体的な手法の金融貯蓄を披露していました。
その一つですが、定額貯金を預ける時は1000円1口で預けなさいという手法。これはその後に話題になった、端数の切り上げ金利という奴で、バブル絶頂期の低金利時代に確か通常貯金(郵便局)の10倍位の金利を定額貯金で得られる方法です。
もうひとつは、その定額貯金を預けて、6か月間はそこから借金をして、その6ヵ月間を証券会社の「金貯蓄口座」という短期間で高金利を享受できるものに預けて、借金をする低金利と金貯蓄の高金利の差額をさらにゲットしようという具体的な戦法です。
そんなこともあり、その当時の人たちは「海江田氏なら日本を大きく変えてくれるだろう」という期待が大きかったのも事実です。
そこでそんな処の「金融話術」の中で、「安愚楽牧場」(あぐらぼくじょう)という、話題がでたということです。
また今回の訴状にある内容では「リスクがゼロ」とかそういった「言い切り」の内容ということなので、いささか「本当に海江田氏はそういうことを言っていたの?」と思うのですが、当時の雑誌の切り抜きなどでもしめしているのでしょうから、本当にそういう事をいったのだと思います。(専門家がそういう発言をするのも考えにくいのですが)
確かに前述のように、海江田氏の雑誌やテレビでの勧めで、安愚楽牧場に投資したという人も実際には多いかと思いますが、あくまでも、それを信用するかしないかの取捨選択はそれを読んだ投資家にあるものなので、その発言から20年以上(民法の責任の時効)に引っかかるものもあるかと思いますし、さらに「表現の自由」という事も考えてみれば、「投資は自己責任」という観点がおのずと裁判では引き出されてしまうのかと思います。
結局この裁判は、残念ながら「敗訴」になる可能性が濃厚です。
では、なぜこの裁判をやった方が「吉」というかといいますと、今後出資者の「被害回復」が主なものは、現在進行中の「破産配当」と国や東京電力や安愚楽牧場関係者を視野にいれた「損害賠償請求」しかないと考えられます。そのアクションを起こすには、一にも二にも「証拠」を揃えなくてはなりません。
また「犯罪性」が濃厚なものと当方では見ていますので、当然「刑事事件」が絡んでもおかしくないのですが、破産管財人の行為やその他もろもろを見ても、「刑事事件」への兆しが今一つ浮かんでこないのが、ある意味での「誤算」となっていて、「刑事事件」として産出される「スーパー証拠」というものを得ることができません。
そのため、最終的な大機関などへの賠償をもとめるにも、小さくても「証拠」を得なくてはなりません。その一つの課程が「海江田氏への損害賠償請求訴訟」ということになるのです。判決は敗訴となってもその過程で生成される「証拠」にも今後の利用価値を期待するものと考えられます。
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