武富士の「税金の過払い金」返還訴訟において、管財人が第一審においては全面敗訴の判決をいいわたされたようです。当然ですが、裁判は3審までありますので、原告敗訴となっている旧武富士の更生管財人は、判決を不服として判決の日を入れて15日以内に控訴することができます。
もしこの訴訟で原告の主張が認められれば、債権者となっている過払い金利用者においての弁済率は現3.3%だったものが大きく飛躍することになります。
武富士は2010年に4400億円という巨額の負債を抱えて倒産(DIP型会社更生手続き)となりました。会社更生手続きは、裁判所が絡んだ法的な倒産処理です。しかし、「会社更生手続き」という倒産処理は、旧経営陣が全員退陣しなければならず、そこに新たに裁判所から選任された「更生管財人」が会社を再生するための最高責任者となって業務に取り組む「管理型(第三者の管財人がつくこと)」の倒産処理となります。けれども、このような方法だと会社の業務を全く知らない人が運営することになったり、所々で債権者にお伺いを立てる事案も発生したり、なんと言っても同様の「民事再生」より有利な点は多々あるにしても、手続きがより煩雑でお金もかかるので、利用する倒産会社は非常に少ないのが現状です。
そこで東京地裁の取り組みでの会社更生業務に関する改正により、債務者(旧経営陣)がそのまま続投して更生手続きに関与することができるようになりました。それを従来の「管理型」に対して「DIP型」(債務者主導型)と言われるので、債務者が引き続き倒産処理を担う会社更生手続きを「DIP型会社更生手続き」とも呼ばれています。
従って、この武富士の更生管財人は、裁判所から選任された管財人ではなく、武富士側から送り込まれた(申立の代理人であった)弁護士がそのまま居座っているというような形となっています。
ですから、その倒産時の時は、大きな軋轢や反発がありました。今でもそういう意味では、更生管財人に対しての「信頼性」が薄らいでいるのは当然のことと思われます。
こういう経緯は今回の本題からは「予備知識」にすぎませんが、今回の税金の過払い金返還訴訟は、後日2006年の最高裁の判例の提示により、消費者金融のグレーゾーン金利が明確になり、武富士の利益になって納税されたものが、武富士の利益が少なくなったわけですから、遡って、払いすぎた税金を返戻する結果となっても不思議ではないということになります。
今回の場合は裁判所が「もう過ぎたものは返せません」と判断し、原告の管財人の主張を退けた形となりました。結局そのお金は、過払い債権といわれる「利用者」に返還されるべきものですから、消費者保護のためにもなんとしてでも取り返さなければなりません。
負債総額は先ほどもおつたえしたように4,400億円でこのうちの明らかになっている過払い金債権者は11万6000人となっています。しかし、実際の過払い金債権者額は1兆円ともいわれその数は200万人ではないかとも言われています。
ちなみに、2011年の最大の倒産は安愚楽牧場の4,300億円と倒産額の規模は類似していますが、同じ消費者被害でも武富士の利用者と安愚楽牧場の出資者は排反するものとみています。つまり、「武富士を利用する人は安愚楽牧場には出資せず、安愚楽牧場の出資者は武富士を利用しない」ものと考えられます。そのため年金受給の高齢者においては、蓄えが少ない人は武富士で生活資金を借りることがあり、預貯金をやや多く残した人は「安愚楽牧場」などに出資して生活資金を増やそうとする行動の2極化となるものと推察しています。
どちらにしても今では「悪い結果」となりその対象となった高齢者の方の今後がとても心配になります。
結局これらから泣きを見ているのは、武富士を利用した人になります。「消費者金融」というものは「サラリーマン金融」とも言われ、一般の消費者が借りるものです。
動機は様々ですが、生活資金や高齢者の方が入院費用がかさんだだめにやむを得ず一時的に利用したという人も少なくありません。
そういう人たちが武富士の高利貸しはもちろんの事、裁判所の時替わりの判断に振り回され結局最後に煮え湯を飲まされるということになってしまうのです。
そう言った世の中であるから日本が貧乏国に陥ってしまうのです。
管財人はやはり不当な判決と戦うべきでしょう。高裁で覆る可能性も充分に有り得ます。
ニュース元・資料