● 日本は資本主義経済社会です。企業の経済は日本の国の運営を大きく支えています。また、お金さえあればたいていの事が解決できる世の中になっています。
そんなシステムではありますが、昨年のリーマンショックなどの金融危機により、その前年に最高益を続々と出していた企業は昨年になって、あっという間に赤字・債務超過
そして倒産(民事再生法の適用申請・会社更生法・破産)という奈落の底に突き落されるという前代未聞ともいえる事態にまでいたっています。その影響の発信源はアメリカです。
日本はアメリカからみれば「敗戦国」です。だからその力関係が今でも経済のなかでも続いているのです。
アメリカがくしゃみをすれば日本は風邪をひく戦後50年が経過していますが、いまでも「敗戦国」というレッテルを引きずっています。
日本が「社会主義経済」であればある程度の影響は防げたのかもしれませんが、前世紀末には、ベルリンの壁崩壊などにより「社会主義経済」の崩壊もある程度立証されたとおもわれます。
そのような観点から日本はより一層の民間主導を打ち出し、小泉純一郎内閣では郵政民営化・省庁再編などで、民間主導がうたわれました。
そこでせめて、「社会保障」がしっかりしていれば、そもそもこのような経済危機にも耐えられたとも考えられます。
(以下参照)
2009年5月6日 10:55 カテゴリー:コラム > 社説
この国はどこへ行こうとしているのか。世の中の仕組みが、あちこちで行き詰まりを見せ、閉塞(へいそく)感に覆われている。方向感も定まらない。まるで大海に漂う小舟に乗っているようだ。 国民の多くが、そんな頼りない不安を抱いている。何を目印にして舵(かじ)をこげばいいのか。どうすれば安心して暮らせる社会が築けるのか。
政府は4月、この問いに答えを出そうと各界の有識者15人を集めた「安心社会実現会議」を発足した。
初会合で麻生太郎首相は、まず日本が目指すべき国家像の議論を求めた。そのうえで、具体的な安心社会の見取り図と、それに照らした雇用、年金、医療、介護、子育てなどの政策目標や優先順位の提示を要請した。
日本は、世界最速で進む少子高齢化や格差拡大など、経済社会構造がきしみを立てて揺らぐ中で世界不況にのみ込まれ、苦境に陥っている。
●国民の共感が必要
この時代の転換期に、社会保障制度を核に国の将来像を語り合う会議は時宜にかなっている。日本再生に向け、国民が共感できる国家ビジョンの提言を期待したい。政府と自治体、地域社会、企業、家庭、個人のありようも変容している。それぞれの役割分担の在り方も問わねばならない。
現下の雇用不安やセーフーティーネットである社会保障への将来不安が、国民が抱く不安の根はバブル後、デフレ不況とグローバル経済の進展による国際競争の荒波にもまれた。
90年代後半には、米国の要求に応じ金融自由化など規制緩和を進めた。労働者派遣法も改正し、原則自由化した。市場主義経済に重きを置き、経済の立て直しを図ったのだ。
「小さな政府」を掲げて2001年に登場した小泉政権は、米国流の市場原理主義の傾向を一層強めた。郵政民営化などの構造改革を推進する一方、財政健全化のため社会保障費の抑制を続けた。製造業派遣も解禁した。
この間、市場のルールを原則自由にしたのに、新しい時代に合った規制と規律は確立されず、拝金主義的なライブドア事件などが相次いだ。
多様な働き方の名の下、不安定な派遣労働を広げたのに、雇用の安全網の強化は置き去りにしたままだった。
その結果、従来あった日本社会の秩序や、公正・勤勉といった倫理観まで揺らぎ、不安が増幅された。終身雇用は崩れ、格差は拡大し、富裕層と貧困層という階層化も進んだ。
安心会議の議論では、行き過ぎた市場主義経済がひずみを生んだという認識では一致している。小泉政権の構造改革路線を修正するなら、その功罪を検証して明らかにすべきだ。
雇用の重要性を強調する意見も大勢だ。日本の全就業者の85%程度が雇われた労働者だ。今は派遣など非正規労働者が全体の3分の1を占める。雇用がおかしくなれば生活不安が増し、それが社会全体に波及する構造だ。
国民の6人に1人は平均年収の半分に届かない貧困層という。「年越し派遣村」が浮き彫りにした、職を失った人が一気に生活に困窮する「すべり台社会」は終わらせねばならない。
政府は雇用保険の適用範囲を広げるなど安全網を拡充したが、なお不十分だ。雇用を軸にして安心社会の構築を目指す考えは、もっともである。
もう1つの論点である年金、医療、介護、少子化対策などの社会保障制度の立て直しも喫緊の課題だ。
小泉政権以来の社会保障費の抑制策は多くのゆがみを生んだ。救急や産科の医師不足、介護の担い手不足などから必要な治療やケアが受けられず、国民の不安を助長している。不安を解消するには社会保障を拡充するしかないが、それには財源が必要だ。
●増税の意思明確に
政府は社会保障の安定財源として消費税の増税を盛り込んだ「中期プログラム」に基づき、3月に税制改正関連法を成立させた。その付則は、経済状況の好転を条件に11年度までに必要な法制上の措置を講ずると記した。
これで政府が国民に新たな負担を求める意思が明確になった。首相は「中福祉・中負担」が持論だ。中期プログラムは中福祉のほころびを認め、質の高い中福祉を実現するとしている。
少子高齢化が進めば社会保障費が膨らむのは避けられない。問題は社会保障の機能をどう強化し、国民が安心できるサービスを提供できるかだ。
増税の前に、経済を成長させて税収を増やし、行政の無駄も徹底排除することは当然だ。しかし、毎年1兆円規模で膨らむ社会保障費の自然増には、どちらも到底追いつかない。
消費税を上げても生活必需品の税率を軽くしたり、低所得者ほど給付を手厚くしたりすれば負担感は薄まる。
政府は国民にこうした説明を粘り強く行い、理解を得る責任がある。国民も議論に積極的に参加すべきだ。
安心会議は6月に提言をまとめ、政府は「骨太の方針2009」に反映させる段取りだ。どこに向けて舵が切られ、どんな「この国のかたち」が示されるのか。この議論も注視したい。
=2009/05/06付 西日本新聞朝刊=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/93707
(2009/5/6/西日本新聞 朝刊コラム)
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