●昨日につづきリーマンブラザーズ証券の残した傷跡の件です。
リーマンショックの提供した金融商品は貧困層をターゲットにしたサブプライムローンが大きく影響しています。
利率も普通の人が住宅ローンを借りるものに比べて高く、一歩何かがあったら債務不履行により、その証券化商品に出資した人は
大きな損失を招くのは当然のこととなります。米国の投資銀行が今後も同じようなハイリスクハイリターン商品を懲りずに提供しようとするならば
やはりその他の世界の金融機関はそこと隔離するようなこともおこなわなければなりません。
【リーマンの悪夢 破綻から1年】(2)不動産市場 消えた資金源2009/9/15
リーマン破綻の影響で公的支援に頼らざるを得なくなった独ヒポ・レアルエステートのミュンヘン市内の支店(ブルームバーグ)
■開発中断、顧客資産凍結の連鎖 米証券大手リーマン・ブラザーズが2008年9月15日に破綻(はたん)したことを受けて、リーマンがロンドンに拠点を置いていたプライムブローカー事業の顧客は、資金借り入れの担保として差し出していた株式や債券など、推定650億ドル(約5兆8700億円)相当の資産を凍結されてしまった。
約3500の顧客には700のヘッジファンドが含まれていた。この資産については、いまだにリーマンの英管財人プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が作業を進めている。PwCのトニー・ロマス氏が8月に語ったところでは、一部の資産返却には最長10年かかる恐れがあるという。
◆投資のプロも自殺
この影響が、リーマンの顧客だった英プライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社オリバントのカーク・スティーブンソン最高執行責任者(COO)に及ぶのに、10日しかかからなかった。08年9月25日、当時47歳だった同氏はロンドンの西45キロのタプローの駅で電車に飛び込んだ。検視官は自殺と断定。検視の段階で同氏の妻は、リーマン破綻から1週間後に自殺をほのめかしていた様子を語っている。
オリバントが08年10月1日に公表した資料によると、凍結された資産はスイスの銀行UBSの株式2.78%。当時、16億スイスフラン(約1390億円)の価値があったという。
また、リーマンの破綻で建設プロジェクトが止まった例は、米国のマンハッタンからカリブ海のタークス・カイコス諸島にまで及んだ。リーマンが売却困難な不動産投資を裏付けにしてローンを得ていたために、市況が悪化して債権者がさらなる担保や資金返済を求めると、同社は身動きが取れなくなったのだった。
不動産ポートフォリオは、救済が可能だとみられていたリーマンの破綻を決定づけた。
08年9月13日、ガイトナー・ニューヨーク連銀総裁(当時)は、リーマンの英銀バークレイズへの身売りを後押しするために、世界屈指のバンカーを集めて、リーマンが保有する不動産の評価を行った。当時の会合に出席した関係者によれば、評価チームは、リーマンの不動産投資について、200億〜300億ドルの過大評価がなされていると断定したという。
バークレイズが買収交渉から撤退したことで、リーマンは破綻を余儀なくされた。
そして、リーマンの破綻によって、世界各国の不動産市場から、主要な融資の供給源が奪われることとなった。リーマンの元幹部によれば、同社は、誰も手を出さない取引に手を出すことで知られていたという。
◆規制一段と困難
ニクソン米大統領の辞任につながった政治スキャンダル「ウォーターゲート事件」で有名になったウォーターゲート・ホテルは、オーナーのモニュメント・リアリティーがデフォルト(債務不履行)に陥ったため、競売にかけられ、2500万ドルで売却された。モニュメント・リアリティーに融資していたのが、リーマンだった。米金融大手ゴールドマン・サックスの本社近くにある分譲マンションも開発が中止された。ここもリーマンからの融資を受けていた。
カイコス諸島の一部、キューバの北東に位置するウエスト・カイコスでは、リッツ・カールトンのホテル建設計画が中断したままだ。ホテル開発会社のマネジング・ディレクター、ジョナサン・シーゲル氏は、マネジャー十数人を人質に取った中国人労働者には1週間後に「身代金」を支払って、事態を収拾したと述べた。
ドイツでは、商業用不動産金融大手ヒポ・レアルエステートが、リーマン破綻の影響で短期の資金調達が困難となり、公的救済を受け入れた。
シュタインブリュック独財務相は公的救済の理由を、世界の金融システムが「奈落の底に落ちる直前だったため」と説明している。
個人投資家からヘッジファンド会社に至るまで、リーマンの破綻によって浮き彫りにされた世界の金融システムの脆弱(ぜいじゃく)性は、規制を一段と難しくしている。
◆米国の信頼失墜
世界銀行総裁を務めた経歴を持つジェームズ・ウォルフェルソン氏は「コントロールすることが難しいのは世界規模での協力関係が必要なため」と指摘。「財務相全員を集めなければならない。もし、取引が1カ所でうまくいかないのであれば、リヒテンシュタインであれ、フランスであれ、中東であれ、うまくはいかない」と語る。
リーマンの破綻はまた、金融のリーダーとしての米国の課題を物語る。世界中が、オフィスや工場、リゾート、住宅建設向けに資本市場を当てにし、その資金調達をアレンジすることでウォール街(米金融街)は利益を得てきた。
香港の調査会社アジア・インベスターズ・パートナーズのマネジング・ディレクター、フィリップ・ユィン氏は失われたのは米金融機関に対する信頼だと指摘。「雇用喪失も景気低迷もすべてがある一つの出来事につながっている。それはリーマンだ」と語った。(Mark Pittman、Bob Ivry)
http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200909150022a.nwc
(2009/9/15/sankei buisiness-i)
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