2014年01月25日

安愚楽牧場事件で元社長ら控訴 〜控訴期限近くで被告人自身の名前で控訴の申し立ては何かの戦略なのか?

 安愚楽牧場の刑事事件においては、元代表と専務の2被告人が今月1月9日(木)に東京地裁で懲役3年弱の実刑判決が言い渡されました。
 「弁護人」らが控訴する意向をしめしていました。そしてすぐに控訴の手続きをしたのかとおもっていましたが、なんと控訴期限ギリギリ近くの1/22(水)つまり控訴期限の前日に手続き(要するに「判決は不服だから控訴する」という文言を提出すること)をしたということです。

 裁判の上訴(控訴・上告)の期限は判決の日からその日を含めて15日以内ということなので、1/23(木)の24時が期限となります。これをみると、期限ギリギリの当日に提出するとした時なにか突発的な事故とかが発生するかもしれないので、安全をみて前日に行うというのは、裁判のこうした手続きにかぎらず、大学・高校の入学手続きやその他あらゆることに言えることです。

 特に裁判は、当たり前ですが「法律」にうるさいところなので、1秒でも遅れれば、その他の要件は整っていても「無効」になってしまいます。
 それに裁判所に来る途中で、「霞ヶ関駅(裁判所の最寄駅)方面の終電が終わってしまったから期限の翌日朝一で出しました」ということはもちろんのこと。人身事故で終電が遅れたので「遅延証明」を添えて出せば期限を勘弁してくれるということもありません。
 ですから裁判の手続きにおいて「期限」は非常に重要なものとなっています。そのため、多くの事件において控訴するような時には判決の日もしくはその翌日や翌々日くらいに出すことが多いです。


 ところで、今回の東京地裁での判決において、記事によると「三ヶ尻久美子及び大石勝也被告人が1月22日に控訴した」ということなので、刑事訴訟法上「被告人らが自らの名前で控訴した」ということになります。別の方法では被告人らが控訴しなくても、弁護人が弁護人らの名前で控訴することも可能です。その場合は「弁護人らが控訴した」というような言い方になります。

 こういった言い方や手続き方法(被告人が控訴しなくても弁護人自らの判断で控訴すること)は刑事訴訟(刑事裁判)において正しい使い方です。

 一方民事訴訟(民事裁判)において同様の使い方はいたしません。

 それは刑事裁判においての弁護士の立場は「弁護人」であって、民事裁判においての弁護士の立場は「代理人」というところにあります。

 刑事訴訟法において、弁護人の立場は明確に示されており、「弁護人」は必要不可欠のものとされています。特に起訴される要件となる刑の内容に「死刑・無期懲役及び懲役3年を超える懲役と禁固」にあたる事件を審理する場合には、弁護人がいなければ開廷できない(必要的弁護事件)ということになっています。

 民事訴訟法において、代理人の立場は明確に示されておらず、「代理人」は必要とはなっていません。それどころか、当事者は原告被告本人となっており、代理人が代理人のみの意思で単独で行う法律行為はありません。
 民事訴訟の報道において、「大阪の出資者64名」が提訴したというニュースが流れたことがありますが、
裏では委任された弁護士(被害者弁護団)が書類を作成して裁判所へ提出しています。それでもこの場合の弁護士は「代理人」であるので、原告である出資者の代わりに行っているということになりますから、
「被害者弁護団が提訴した」という報道記述は見られないはずです。

 そのあたりは報道記者はしっかりと教育を受けてきているかと思います。


 あと、以前の判決の日のNET-IBの記事に下記のような記述がなされていましたが

⇒全国安愚楽牧場被害対策弁護団(団長:紀藤正樹弁護士)は、ホームページ上で、詐欺事件として起訴しなかった検察官に抗議し、「近く検察審査会に対して詐欺罪での起訴を求めて、申し立てをする予定」としている。また、被告人らに対しては「控訴することなく、刑務所において、自らの行為について振り返り、今後、いかに被害者に対して償いを行なっていくかを考えて、具体的な賠償方法を提示するよう求めます」としている。←


 詐欺罪での起訴を求める案件がどの案件なのかはわかりませんが、今回の裁判に挙がっている192人の出資者の件であれば、控訴期限までに検察も被告人・弁護人も控訴しなければ、控訴期限をもって判決が確定するので、「一事不再理」の決まりから、その事件内容で再び起訴されることはできません。
 それに三ヶ尻・大石被告人が確定判決を経て刑務所に服役したら、破産もしているわけですし、それにより民事裁判でも訴えられているわけでもないので、法的に金銭的に償う義務はないから、被害者に償うということは期待できないでしょう。

 今後は控訴審がいつになるのか注視して行きたく思います。

 




安愚楽牧場事件で元社長ら控訴 〜控訴期限近くで被告人自身の名前で控訴の申し立ては何かの戦略なのか?


安愚楽事件で元社長ら控訴 
  
1月23日 朝刊

 
 経営破綻した「安愚楽牧場」(那須塩原市埼玉)の旧経営陣がうその説明で出資を勧誘したとされる事件で、特定商品預託法違反(不実の告知)の罪に問われ、東京地裁で懲役2年10月(求刑懲役3年)を言い渡された元社長の三ケ尻久美子被告(69)は22日、判決を不服として控訴した。

 同罪に問われ、懲役2年4月(求刑2年6月)を言い渡された元役員の大石勝也被告(74)も同日付で控訴した。

 公判で両被告は起訴内容を認め、量刑が争点だった。弁護側は「架空の牛の割り当ては一時的なもので牛の数を増やす計画があった」とし、執行猶予付き判決を求めていた。

 控訴の理由について弁護側は「量刑不当と判断した」としている。
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20140123/1482711
(2014/1/23/下野新聞)



(参考)
「安愚楽牧場」元社長に実刑判決、懲役2年10カ月
社会2014年1月10日 16:35
 
agura.jpg 和牛オーナー制度が破綻して倒産した安愚楽牧場が、出資者に事実と異なる説明をしていたとして、特定商品預託法違反(不実の告知)容疑で罪に問われた裁判で、東京地裁は9日、同社元社長の三ケ尻久美子被告(69)に懲役2年10カ月(求刑懲役3年)、元専務大石勝也被告(74)に懲役2年4カ月(同懲役2年6カ月)の実刑判決を言い渡した。
 
 繁殖牛が不足しながら、繁殖牛が存在しているかのように装って勧誘を続けていたことが犯罪と認定され、ほぼ求刑通りの実刑判決が下された。
 
 安愚楽牧場のオーナーは全国約7万3,000人以上で、被害額は約4,200億円。消費者事件としては過去最大規模となる。安愚楽牧場の倒産をめぐっては、11年8月に行なわれた債権者説明会でも、資金難に陥っていながら勧誘を続けたとして、「詐欺事件の可能性が高い」、「民事再生でなく刑事告訴すべき」などの声が上がっていた。繁殖牛の頭数などについても、当時から疑惑を指摘する声があった。

 全国安愚楽牧場被害対策弁護団(団長:紀藤正樹弁護士)は、ホームページ上で、詐欺事件として起訴しなかった検察官に抗議し、「近く検察審査会に対して詐欺罪での起訴を求めて、申し立てをする予定」としている。また、被告人らに対しては「控訴することなく、刑務所において、自らの行為について振り返り、今後、いかに被害者に対して償いを行なっていくかを考えて、具体的な賠償方法を提示するよう求めます」としている。
http://www.data-max.co.jp/2014/01/10/10_59248_dm1223_5.html
(2014/1/10/NET-IB)

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