よく、立川談志だったか、桂歌丸 だったか覚えていませんが、落語に、「捜査機関の研修機関です」と寄席の出演者がこたえると、司会者が
「それは、どこですか」と尋ね直すと、「下呂(自供)温泉と木曽(起訴)温泉」ですと回答をする場面がありました。
そこで、会社の倒産事件で破産になるのはともかくとして、それが刑事事件までに至る時、代表を始め、役員が逮捕されることがあります。その時自供して起訴猶予になる役員と、否認して起訴される代表や役員と2手にわかれるという経緯はよくあることです。
日本には外国のような「司法取引」というものは制度的にはありませんが、事件の関わりが軽微である場合はその罪を認めるということと、検察の捜査に協力するということであれば、「起訴猶予」という罰しない処分を行うことがよくあります。これは日本の刑事訴訟法に規定されている「起訴便宜上主義」(きそべんぎじょうしゅぎ)という、起訴するかどうかは検察官の裁量に任せられるという趣旨のものです。
つまり、極端な話、殺人事件で有罪であることが見え見えでも検察官の裁量で起訴しないことができるということです(実際に人を殺して殺人罪ということが見え見えなものに起訴猶予を与えることはありません)
この事件をもう一回振り返ってみますと、まず民事再生手続きにおいて、元社長が著しい粉飾を行ってさらには、民事再生手続きの監督委員(その後再生管財人となり現在は破産管財人)が大阪地検特捜部に粉飾した財務内容を報告したということで、告訴その結果大阪地検特捜部が動いて逮捕起訴に至ったということになります。
ここでは、次の2つの罪が存在します。
@ 民事再生法違反〜これは先(告訴)を施したということです
A 詐欺〜これは、嘘の財務内容を見せて、銀行に融資させるなどをしたということ。
今回元取締役の夫である谷誠被告人(先ほどのAの罪では起訴されているので被告人という呼び方を継続されています)は@の罪に関して、関与が薄いということで「起訴猶予」ということになりました。しかしこの起訴猶予というのは、それなりの罪を認めていてさらには、検察の立証に「協力する」という暗黙の了解なので、今後は、それに関しては検察側の証人尋問ということでゲロ(検察に有利な証言や供述)組に回ることになるのかと思います。
これを追うような形で、安愚楽牧場も管理命令(管理型民事再生)そして破産という道筋をたどっていますが、安愚楽牧場における破産管財人は検察(ここでは東京地検になります)に告発するようなことはないと見ています。
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