大阪府大東市にある大阪産業大学の研究室において、その大学のデザイン工学部の宇佐美清章准教授(39)に包丁を突きつけたということで同大学工学部情報システム工学科3年生である学生が逮捕されたということです。容疑者は目無し帽をかぶって犯行に及んだとされ、少々の格闘となった後宇佐美准教授が手で刃物を掴んでしまい怪我に至ったということです。その時の状況からして警察は殺す意思があったと判断しており恐らく逮捕後の供述においても「殺す」意思の供述を引き出したことと思いますので、容疑(被疑事実)として「殺人未遂」ということになったものと思われます。さらに「刃物」(包丁)を持っていたので
日本で禁止されている「銃刀法違反」に当たるため、殺人未遂と併せて「銃刀法違反」ということでも逮捕したということです。
今回の「銃刀法違反」は包丁を持っていて「正当な理由なく所持していた」と判断されたためです。基本的に「刃物」を所持することは違法になります。ただし「正当な理由」があって所持・携帯する場合は「違法性がない」という解釈をしています。
例えば家庭にある包丁においては目的が調理であるので「正当な理由」と認められますし、スーパーやホームセンターから購入した包丁を持ち帰っている(携帯している)時も「正当な理由」と解釈されています。また、小学生がランドセルに「カッターナイフ」を入れて登校することも「正当な理由」ということで解釈されています。そういう意味では「刃物」の所持・携帯は幅広く認められているということになります。
しかし、それが目的からはずれ「護身用でカッターナイフを携帯しています」ということであれば、直ちに「銃刀法違反」となります。
ただし、次のような事があった場合
→(例)高校の美術の授業でカッターナイフを使うのでカバンに入れて登校しました。授業が終わり下校途中で、別の3人組の不良高校生に「金を出せ」と言われて、襲われそうになったとき、すかさず持っていたカッターナイフで威嚇(いかく)して追い払いました。でもその場面を巡回していた警察官が目撃しました。
これはどうなるかというと、本来カッターナイフは銃刀法による刃物であるため「正当な理由」がなければ違法になります。カバンに入れて登下校する行為は「正当な行為」なので違法性はありませんが、カッターナイフで威嚇する行為は「違法」です。ただしこの状況は威嚇しなければ、自分の生命・財産が脅かされるのでやむを得ず持っていた刃物で威嚇したということが認められるので、刑法でいう「正当防衛」(せいとうぼうえい)にあたり、違法性がなくなります。
そう考えてみると結局護身用で持っていても「正当な理由」が説明できれば、ごまかしてしまうことも可能となってしまいます。
もうひとつ言及するのは、今回の大きな容疑は「殺人未遂」です。これは「殺す意志」が明確であること(故意があること)と、殺す事が可能であることの2つの要件を持っていなければなりません。
それは包丁が人の命を奪うことが容易に可能ということの判断からです。もしこの容疑者が殺人目的で襲ったとき、手にしていたものが「包丁」ではなく安い「スリッパ」であったら、「殺人未遂」とはならず、その行為で怪我をしたら「傷害罪」、怪我がなかったら「暴行罪」ということになります。例え殺す意志があったとしても、それを本当に明確に警察や検察でも証明できないと解釈してしまうので、法律や判例上は「不能犯」などということで裁判での実例が備わっています。
それから今回は「傷害罪」も適用できるのですが、「殺人未遂」も怪我があっても殺す意思があれば、「傷害罪」は「殺人未遂」に吸収されますので、「殺人未遂」が適用されます。
法律とは別になりますが、「人を殺すには理由があり、身分は一切関係ありません。」よく教師が殺人したとか警察官が人殺しをしたということで驚きのニュースになりますが、誰でも人間であれば「殺したい」というような理由や怒りというものを併せ持っています。
今回の場合、言い方が申し訳ありませんが、被害にあった准教授にも何らかの落ち度があったのかもしれませんし、そういった可能性も否定できません。教育者として欠如していたことがあったのかもしれません。加害者の学生も「堪り兼ねる」ことがあったのだと思います。その打開策として、学生は意見を述べたり、強く抗議する事が必要です。場合によっては、学長を巻き込んでもいいと思います。それでも解決ができなかったら、弁護士を立てて訴訟を起こしても学生上の立場がきついものになるかもしれませんが、裁判を起こす事は憲法が保障した権利です。でも暴力を振るう、ましては命を絶つ行為は許されません。
日本では「大学」というのは、建前上なのかもしれませんが、単に専門知識だけではなく幅広い一般教養を身につけて、それなりの「学士」(学位記)という資格を授与されます。一般社会では「大学卒」ということで、専門の知識以上に教養や道徳(実際にそういう教育はしませんが)を身につけたと判断して企業が採用します。ですから「大学で学ぶ」という事は、単に専門知識を身につけるだけではなく、生涯付き合える友達を作ったり、アルバイトに励んだり、サークル活動などをやったりと、基本的に4年間という期間ですが、社会に出たら特別な事がない限り、何十年と定年になるまで就労をしていかなければなりません。
真面目に大学で前の席で一生懸命に勉強しても、著しく社会に逸脱した行為をしてしまっては、取り返しの付かないことになります。大学・当の准教授も反省すべきところ改善すべきところはあるのかもしれません。命に別状がないだけでも当事者にとって、幸いでした。
ニュース元・資料
posted by 管理人B at 02:47| 東京 ☀|
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