リプラス破産から満5年(2009年9月24日)
株式会社リプラス(旧東証マザーズ8936)が破産申請及び破産手続き開始決定(2009年9月24日)から満5年が経ちました。
当ブログは破産の日の翌日2009年9月25日に立ち上げました。
上場企業の倒産をすれば、株式が早かれ遅かれ「紙くず」になるのですが、同じ倒産でも「民事再生」と「破産」ではその「紙くず」になる速度が違い、「民事再生」は約1か月間「整理ポスト」にいれられて、そこで売買されながら徐々に値段を下げて紙くずになります。「破産」はその期間が「1週間」となっているため急速に値を下げて最後は紙くずになっていきます。
リプラスはどのような会社だったかと言いますと、業種でいうと「不動産業」になります。
やっていた内容は、不動産ファンド事業(要するに「不動産投資」〜一般及びプロの投資家からお金を集めて、不動産を購入しその利益を配当として分配するもの)と家賃支払債務保証の2つの事業でした。
家賃支払債務保証というのは「賃貸保証」「家賃保証」という呼ばれ方をします。例えば賃貸住宅(アパートなど)を借りる時には敷金・礼金・1か月前家賃などを払いますが他にも仲介業者へ支払う「仲介料(約0.5か月〜1か月分)」火災・損害保険料(思わず失火した時や水の出しっぱなしで下の家に水浸しなどで損害を与えてしまった時など)もありますが、その中に「家賃の保証料」というものを支払う事があります。
そして、賃貸住宅を契約する時は、大家さんとの契約になるのですが、借主(本人)だけの契約の他に第三者の契約も必要になります。その一つが「連帯保証人」という契約です。
通常「連帯保証人」は親御さんや親類がなることが多いのですが、今の人間関係が軽薄な時代などの背景もあり、その連帯保証人になってくれる人が少ないのが実情です。
そのため、その隙間をついて、その連帯保証人を「法人」として請け負うのが「賃貸保証会社」ということになります。
「不動産ファンド」の会社や「家賃保証」の会社は多くありますが、同じ会社に2つの業務を持っている会社はこの「リプラス」だけでした。この2つの事業は一見「別物」に見えるようですが、この2つの事業があわさると「凄い威力」を発揮します。
「不動産ファンド」は皆からお金を集めて不動産を購入するものですが、「お金」はできるだけ多くあった方がより大きなものを購入することができるということになります。
銀行で頼めば貸してくれるかもしれませんが、銀行も貸した以上返済してもらわなければなりません。それに貸す以上利息がとられます。
一方、「賃貸保証」事業は借主から一定の「保証料」をとって運営します。いわゆる「保険」のようなものなので、1000人に1人の事故の対応のために、豊富な資金を「プール」します。
本来そのお金は勝手に引き出せないなどのように第3者で管理する「信託銀行」などに預けておくのが理想なのですが、事故による資金の出動もあるため、流動的なところでの保管も必要になります。そのため、銀行の預金にいれておいてもいいのですが、どうせならもう少し利率の高いものに「投資」してもいいかと思います。
そのお互いの目論見が一致したものが同じ会社内の事業に存在しました。不動産ファンドで必要な資金調達は投資家の他に「家賃保証」のプール資金を使い、その儲かった配当と元本を家賃保証に戻すことによって、非常に効率のよい「運用」ができます。その結果、両事業は急速な拡大へとなりました。
拡大するのはいいのですが、もしその思惑が「逆」の方向に傾いた時、結果は普通の不動産ファンドの何倍もの損失で帰ってきます。しかも賃貸保証のプール資金もかなり欠けた状態でもどってきます。
つまり「ハイリスク・ハイリターン」のビジネスモデルだったのです。
この会社の創業は2002年ですが、このことは「ミニバブル」とも言われる時代でしたのでその波にのったため他の同業以上の利益をもたらせました。しかし、その後2008年にやってくる米国の「サブプライムローン」によるリーマンショック(リーマンブラザーズ証券を端におこった破綻)の波がこのリプラスにも大きく及び、大きな損失を出す結果になりました。
普通の不動産ファンドであれば、ある程度の損失ですみましたが、リプラスの場合は大きな「レバレッジ」(何倍もの借入を巻き込んだ大きな投資)が大きく聞いていたため、その損失は「300億を越える債務超過」となってしまいました。
そのため民事再生で再起を図る以上の傷となり、結局「破産」ということで事業閉鎖となりました。
これが2009年9月24日の東京地裁への破産申請及び破産手続き開始決定です。
その後、破産手続きが粛々と進められ、2011年3月破産手続きが終了となりました。
けれどもリプラスの事業は優良なもので「手堅い」といわれた「家賃保証事業」は投資ファンドを通じたIT企業である「株式会社デジタルチェック」へ事業譲渡され、名前も「レントゴー保証株式会社」その後においては「株式会社Casa」となり現在に至っています。
一方「不動産ファンド」事業の方は、倒産の震源地であったため、閉鎖とはなりましたが、そこから派生した、「不動産投資信託」(J−RETTであるリプラスレジデンシャル投資法人)が「倒産隔離」となって、難を逃れることができました。そして名称も現在の投資の目的物の名称をとって「日本賃貸住宅投資法人」で現在に至っています。
当ブログの方は、当初はリプラスでの投資家ための被害回復を考えるということで活動しはじめました。そして単にそれだけでは根本的な回復することが難しいため、同様の不動産会社の倒産は勿論、他の倒産事件を比較考察すること多くの投資家としてのリスク回避などの情報を提供し、スキルアップを図ろうということへ発展してきました。
5年間当ブログをやってきて、実感したことは、「投資」というのは「人のために役立てよう」・「人の助けになろう」という考えが特に大切な事で、その投資を受けた人は投資をしてくれた人に何倍・何十倍とお返しをしようとしてくれます。それは金銭だけではなく、労務や情報など目に見えないものまでが投資の原資となります。
当方もブログをやっていて目に見えない恩恵も多々受けましたのでさらにそれを多くの人にお返ししたく思います。
引き続きよろしくお願いたします。