「ヤマダ電機」は家電量販店の会社で、現在国内で最大手と言われています。かつて「家電量販店」という業界のメッカは東京の秋葉原が長きに渡り担っていました。
しかし、1995年のウインドウズ95日本版の発売により、電気の街からヲタクの街に徐々に変わり、今では、「家電」に関しては、「秋葉原」というよりは、東京の「池袋」の方にシフトしていきました。そして前年の2012年ご病気で亡くなられた流通ジャーナリストで特に家電の「購入」に詳しい金子哲雄さんは、家電を求めるのに「池袋価格」(つまり、池袋で買うのが最も安く買える)という言葉を用いるようになり、今ではそれが浸透してきています。
この「池袋」を家電のメッカとしてキッカケを作ったのは、同業者の「ビックカメラ」(池袋がこの会社の本拠地であり本店)です。1970年代から群馬県高崎市で創業して、池袋に進出して約20年以上営業してきています。その20年後の同じ群馬の前橋市創業のヤマダ電機がロードサイドでの出店がメインだった営業戦略から池袋のしかもビックカメラ本店のすぐそばに、出店いたしました。
そこから、この家電戦争がエキサイトすることにより、「池袋」が家電購入の代名詞になると頃まできてしまいました。
家電が安く買えるというのも、このような競争が激化しているおかげで、当然資本主義の原理が働き「低価格競争」というものが実現しています。
でも「低価格」を引き出している原資は何かといえば、「低賃金の労働力」に他なりません。
ローコストの労働力は、ヤマダの専売特許のようなものです。
今こういった家電量販店にかぎらず、大手スーパーなどにおいても、従業員を見渡せば、そこの「正社員」は少なく、多くが「契約社員」と言われるフルタイム・パートタイムの社員であったり、派遣社員やアルバイトでの就業も非常に多く占めています。「正社員」は10人に1人という位の割合かと思います。
さらにヤマダが考えた手法は、仕入れ業者(panasonicやシャープなどのメーカー)の販売員を利用して、自社製品とは全く関係のない商品の販売もやらせていたということです。その行為が以前労働局から物言いがついた事は、有名なことです。
当然そういった事があるのですから、そこに所属する「正社員」は非常に厳しい労働環境となっていることは推察されるかと思います。
今回の損害賠償請求訴訟は、
ヤマダ電機に勤めていた正社員(就業期限を設けていない従業員、つまり定年迄働ける従業員)が2007年にうつ病を患って自殺したということです。その原因はヤマダ電機での長時間労働によることだとして、本社のある群馬県の前橋地裁高崎支部に提訴したということです。先駆けて就労していた場所を管轄する労働基準監督署からも「労災」の認定がされているため、遺族は当然怒りもあることながら、原因はヤマダ電機にあるということで、前橋地裁高崎支部に訴えたということです。
106時間の時間外労働時間は、
106時間(1ヶ月)÷20日(単純に週5日労働とすると)=5.3時間
1日の法定労働時間は8時間ですから、8+5.3=13.5時間
サービス業なので、普通の事務職の会社勤務体系とは違いますが
9時+13.5時間=22.5時 昼に1時間休憩をいれると 23.5⇒つまり朝9時から 午後11時半迄毎日勤務しているということになります。
非常にキツいです。体が不調になっても当然のことです。
この亡くなられた社員の方やご遺族は、本来は、どこにお住まいだったのかはわかりませんが報道では「柏崎市の男性」ともなっているので、新潟を拠点として生活していたのかとも思われますが、こういった時に重要になることが、提訴する裁判所の管轄です。
よくサービスの「契約」をする時に「合意管轄裁判所を東京地方裁判所を第一審とする」などということが記載されており、大抵はその相手企業の「本社」であることが多いです。
そして、その後において不具合が発生したりなどで紛争⇒裁判に発展するときに、裁判を起こすにはその契約書で合意したところでなくてはならないのかという話もよく出てくるのですが、決してそうではなく、何らかの関わりがあれば、原告の最も都合のよいところで提訴するのがいいかと思います。
ですから、仮にご遺族等が新潟の柏崎に住んでいれば、ヤマダ電機の柏崎市の店舗がある地方裁判所に提訴すればより低コストで提訴できるものと思います。
当ブログで取り上げた「民事裁判事件」に関しては、
武富士の過払い金返金訴訟においては、被告(創業者一族)の本拠地は西新宿なので、東京地方裁判所へ提訴をするのが、一応の筋なのですが、実際は、借主が契約した店舗のある裁判所に各々提訴しています。
被告からは、「頼むから、訴訟は東京で一本かしてくれ」と管轄の無効などを主張しているようですが、裁判は個々に提訴された裁判所で進行しています。
また安愚楽牧場の損害賠償請求訴訟では、旧経営陣に対しての訴訟がごく一部の被害者(出資者)により提訴されましたが、その提訴の場所が安愚楽牧場の拠点(本社のある栃木県那須塩原市や営業所のある東京都中央区)とは関係のない大阪地方裁判所にて提訴されています。
そういった例から見ても、「合意管轄裁判所」はあっても、原告が提訴するのに最も都合のよいところを選ぶのがその後の手間暇や金銭面でも吉であることがわかるかと思います。
今景気の低迷で、倒産する会社も少なくありませんが、その回避策として、「低賃金長時間労働」や「サービス残業」なんていうものが堂々と行っている実態があり、「ブラック企業」という言葉が流行語大賞になるような時代にまで来ています。
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