例えば、オーソドックスな事例は次の通りです。
@「20時間までの残業代は出すけど、それ以上の残業代は出せないから20時間以内に収めるように効率的にやりなさい」と限界時間数を提示して、それ以上の残業時間となる場合は実質的に「サービス残業」となる状況。
A「営業手当」「業務手当」を月30,000円固定支給して、それを「固定残業代」というような賃金体系にしているんだけど、実質労働時間が50時間〜60時間にもなり、30000円の固定残業代は600円/時(30000円÷50時間)というような法令でしめされているような1時間当たりの最低労働賃金を下回るようなこと。
B店長の役職についているのだけれども、自身の雇用内容は「契約社員」。雇用契約は6カ月毎の更新。賃金は日給月給制だけど、正社員より賃金が安い体系となっており、しかも残業相当のものは「店長手当」月20,000円で一律残業の分もこれですべてカバーさせている。「契約社員」だけに基本給も月170,000円と正社員に比べて低賃金構造。
以上のような例はほんの一例で、枚挙に暇がありません。
さらに、従業員を少なくすることによって少なくなる労働力を、現存の従業員にその分の負担(労働時間を長くする)させることによって、会社の負担を軽くするということが、先の例の向こうにある共通する目的に行きついています。
その方が、会社のもつ雇用リスクを少なくして、年金や労災等の社会保険の負担も軽減されることから、こういった労働環境が必然的につくられてきてしまいます。
さて、今回の「東急ハンズ」での過労死は、その典型的な例になります。
実際本記事にあるような時間外労働80時間(ざっくり月20日の労働とすると1日当たり4時間の残業)と死亡との因果関係が証明できるかというと実質「難しい」かと思いますし、違う要因が絡んでいるのかもしれません。
しかし、月45時間(一日平均2時間15分の残業時間)を超えるような「時間外労働」は「健康を害する恐れあり」と定義づけされており、その時間をこえるような労働時間が続けば、仮にその因果関係を証明することができないとしても、「可能性」だけで、「過労死」を認定できるという、一歩進んだ判決となるのかと言えます。
現在の法令で決められていることは、次の通りです。
@雇用保険(失業給付)において、離職(自己都合も会社都合も含めて退職ということ)の3か月前から45時間以上の時間外労働が続いた場合は、「会社都合の退職」とする。
A月の時間外労働(法定残業時間)の合計が60時間を超える場合は、その超える時間について1.5倍の賃金を支給すること。
こういったことから、ある残業時間を超えた状態での心身の損傷や交通事故が起こった場合は、その長時間労働によるものと推定するような判断も今後は多く下されるでしょう。
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